「小口化なら安心」は本当か?相続税評価の新ルール~不動産小口化商品の相続税評価の見直し~

2026年02月18日

令和8年度税制改正大綱

前回解説した「貸付用不動産の評価見直し」を読んで、「現物のアパートを建てるのがダメなら、手軽な小口化商品なら…」と思った不動産オーナーもいらっしゃるのではないでしょうか。

小口化商品は「現物不動産より手軽」「流動性もある」「相続税評価も下がる」という三拍子揃った節税商品として紹介されることが少なくありませんでした。

しかし、残念ながらその節税策にも、令和8年度税制改正でメスが入ることとなりました。

そもそも不動産小口化商品とは?

不動産小口化商品とは、都心のオフィスビルや高級マンションなどを複数の投資家で共有し、一口単位で所有する仕組みです。
法的には以下の形態が多く見られます。
・任意組合型
・匿名組合型
・信託受益権型
これらは実質的には「不動産投資」ですが、相続税評価上は現物不動産と同様の評価減が可能とされてきました。
つまり、
・土地は路線価評価(取引価格の7~8割)
・建物は固定資産税評価額
・貸付物件であればさらに評価減
という仕組みが使えたのです。
実際に、一口1,000万円で購入しても、相続税評価額は300万円〜400万円程度まで圧縮できる場合もあり、相続対策商品として、近年富裕層を中心に急速に拡大しました。
一方、この手法は、「課税の公平性に欠く」として、国税当局では見直しの対象となっていました。
今回の令和8年度税制改正では、こうした評価差を是正する方向性が示されています。

令和8年度税制改正で不動産小口化商品の相続税評価はどう変わる?

小口化商品における改正ポイントは下記のとおりです。
・取得時期に関係なく
・原則として通常の取引価額(時価)ベース
・「5年保有すればOK」は通用しない見通し
・適用開始は、令和9年(2027年)1月1日以後に発生する相続

つまり、貸付用不動産のように「5年保有すれば従来評価が適用される」といった取扱いは想定されていません。
令和6年1月1日以後、いわゆる「タワーマンション節税」についても評価方法の見直しが行われました。今回の小口化商品の改正は、「貸付用不動産の評価見直し」同様、その流れをさらに進め、「形式的な不動産保有による評価差」を是正する動きと位置付けられます。
不動産を使った相続対策は、明確に転換期に入っているといえます。

既に購入している不動産小口化商品はどうなる?

小口化商品の場合、前述のとおり取得時期にかかわらず、原則として取引価額(時価)をベースに評価される見込みです。
一方で、小口化商品には下記のようなリスクもあります。
・解約制限
・償還期限
・市場価格の変動
想定していた評価減が受けられないうえ、自由に解約できず現金化も難しい場合、資産ではなく実質的な負債となってしまう可能性も否定できません。

今後、注意すべきポイント

 

今回の改正を受け、下記に該当する場合は留意が必要です。
・金融機関や販売会社の説明を前提に判断してしまっている
・数年前の成功事例をそのまま踏襲している
・税制改正を十分に織り込まずに保有・購入を検討している
・高齢の親が保有している
・近い将来、相続が発生する可能性がある

不動産小口化商品は、「不動産」であると同時に「金融商品」でもあります。
そのため、相続税評価だけではなく、下記まで含めた総合的な検証が不可欠です。

・将来の相続発生時点での評価方法
・キャッシュフローへの影響
・二次相続まで見据えた資産配分
・出口戦略(売却・償還の可能性)
これからの相続対策は、「何を買うか」ではなく、「相続発生日にどのように評価されるか」を起点に考える必要が出てきました。
不動産を使った節税策では、税制改正後のルールのもとで、どのような評価がなされるのかを正確に把握することが重要です。
当事務所では、これまでの税制改正を踏まえた相続税シミュレーションを実施し、既存資産への影響を検証したうえで、必要に応じてポートフォリオの再構築をご提案しています。
「保有している小口化商品は大丈夫か?」
「これから購入を検討しているが問題ないか?」
そう感じられた方は、ぜひ一度ご相談ください。
相続発生後では選択肢が限られます。事前の検証こそが、最大のリスク回避策です。

この記事を担当した税理士

宮本志穂税理士事務所

宮本志穂

保有資格
税理士試験官報合格:簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法、宅建士

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