【都心部の共有名義不動産相続】トラブル回避と賢い分割方法

2026年07月14日

「兄弟で平等に分けたいから、とりあえず共有名義にしましょう」
相続のご相談の場で、こうした選択をされるご家族は少なくありません。特に都心部の不動産は資産価値が高く、物理的に分けることが難しいマンションなどでは、共有名義という選択肢が現実的に見えることもあります。しかし、共有名義は、将来の売却・活用、さらには二次相続の場面で深刻なトラブルに発展しやすい仕組みでもあります。
今回は、都心部の共有名義不動産が抱えるリスクと、トラブルを避けるための賢い分割方法について、女性税理士の視点から解説します。

💡30秒でわかる!この記事のポイント

・不動産の共有名義は、将来の売却や活用に「共有者全員の同意」が必要となるため、将来的に意思決定が凍結してしまう重大な盲点があります。
・共有状態を解消・回避する現実的な選択肢として「代償分割」や「換価分割(売却)」がありますが、それぞれ資金計画や譲渡所得税への配慮が不可欠です。
・相続発生後のトラブルを根本から防ぐためには、ご存命のうちに「家族信託」や「遺言書」を活用し、共有名義化させない仕組みを整える生前対策が極めて有効です。

 

1. 共有名義不動産がトラブルになりやすい理由

1.1 都心部の高額不動産ならではの課題

都心部の不動産は資産価値が高いからこそ、共有者間の意見の対立が起きやすいという特徴があります。「今すぐ売却して現金化したい」という相続人と、「将来の値上がりを期待して持ち続けたい」という相続人の間で、考え方が一致しないケースは珍しくありません。価値が高い不動産であるほど、一つの決定がもたらす経済的な影響も大きくなるため、慎重な姿勢になるのは自然なことです。
また、都心部に多いマンションのような不動産は、戸建てや土地のように物理的に分割することができません。「兄が1階部分、弟が2階部分」というような分け方ができない以上、共有名義か、単独取得か、売却かという選択を迫られることになります。

1.2 共有名義のデメリットとリスク

共有名義には、見過ごされがちな実務上の負担も伴います。固定資産税や管理費・修繕積立金といった日常的な費用負担を、共有者間でどう分担するかという問題が継続的に発生します。また、不動産を売却したり、賃貸に出したりするには、原則として共有者全員の同意が必要です。一人でも反対すれば、物件を動かすことができません。
さらに見落とされがちなのが、二次相続のリスクです。共有者本人が亡くなると、その持分はさらにその相続人へと引き継がれ、世代を経るごとに権利者の数が増えていきます。最初は兄弟2人だった共有関係が、10年後・20年後には甥や姪を含む複数人の共有状態になっていることも珍しくなく、合意形成はますます困難になっていきます。

世代間でネズミ算式に増える共有権利者

2. 共有名義不動産の賢い分割方法と税金対策

2.1 代償分割のメリット・デメリットと税務上の注意点

共有名義を避ける有力な方法の一つが「代償分割」です。これは、特定の相続人が不動産を単独で取得し、他の相続人にはその持分に相当する現金(代償金)を支払うという方法です。不動産の管理・活用の権限を一人に集約できるため、将来の意思決定がスムーズになるという大きなメリットがあります。

一方で、取得する側にはまとまった現金が必要になるため、資金計画が課題となります。また、代償金については、適正な金額で支払われている限り贈与税は課税されませんが、不動産の評価額の算定方法や代償金の金額設定によっては税務上の論点が生じることもあるため、事前の確認が重要です。

2.2 換価分割(売却)の進め方と譲渡所得税

不動産を売却し、その売却代金を相続人で分け合う「換価分割」も、現実的な選択肢の一つです。物件に対する思い入れが少なく、相続人全員が現金化を希望している場合には、最もシンプルに公平性を実現できる方法といえます。
ただし、売却によって利益(譲渡所得)が生じた場合には、譲渡所得税が課税されます。この際、相続開始のあった日の翌日から起算して3年10ヶ月以内(相続税の申告期限の翌日から3年以内)に売却した場合は、納付した相続税の一部を取得費に加算できる「取得費加算の特例」を活用できる場合があり、税負担を抑えられる可能性があります。売却のタイミングは、税務上の有利・不利にも直結するため、計画的な検討が欠かせません。

2.3 共有物分割請求訴訟を避けるために

すでに共有名義になってしまっている場合でも、共有者間の協議によって解消できるのであれば、それが最も望ましい解決方法です。協議がまとまらない場合の最終手段として「共有物分割請求訴訟」がありますが、訴訟には時間・費用がかかるうえ、最終的に競売による分割となれば、市場価格より低い金額でしか売却できないリスクもあります。
訴訟という事態に至る前に、税理士や弁護士といった専門家を交えて話し合いの場を設けることが、円満な解決への近道です。第三者の視点が入ることで、感情的な対立を避けながら、現実的な落としどころを見つけやすくなります。

 

3. 【2026年最新】遺言と家族信託で「共有名義」を未然に防ぐ生前対策

すでに相続が発生している場合は上記のような遺産分割を協議しますが、もしご両親がご存命であるならば、「最初から共有名義にせざるを得ない状況を作らない生前対策」をとることが最善の選択肢となります。
当事務所(併設の行政書士事務所)が資産家の方々に強くおすすめしているのが、行政書士業務として手掛けている「家族信託(民事信託)」や「公正証書遺言の作成」の活用です。
例えば「家族信託」を活用すれば、不動産の「管理・売却の権限」は信頼できる長男一人に集約しつつ、そこから得られる「賃料や売却時の経済的利益」は兄弟で平等に分け合う、といった極めて柔軟な財産設計が可能になります。これにより、親世代の想いである「子供たちへ平等に遺したい」という希望を叶えながら、将来の不動産凍結という重大な盲点を完全に回避することができます。
税務上の評価減(税理士業務)と、法的な凍結防止スキーム(行政書士業務)を組み合わせた総合的なアプローチこそが、次世代への円満な資産承継の鍵を握っています

 

4. 円満な相続を実現するための話し合いのポイント

4.1 家族間の感情的な対立を避けるために

共有名義をめぐるトラブルの多くは、財産そのものよりも、家族間の感情的なすれ違いから生じます。だからこそ、相続が発生してから話し合うのではなく、できるだけ早い段階――被相続人がご存命のうちから、家族で方針を共有しておくことが重要です。早期に話し合いを始めることで、選択肢を広く検討する時間的な余裕も生まれます。
また、当事者同士だけで話し合うと、過去の感情的なわだかまりが顔を出し、本質的な議論が進まないことも少なくありません。第三者である専門家を交えることで、議論を建設的な方向に進めやすくなります。

4.2 専門家を交えた話し合いの重要性

税理士や行政書士が同席することで、不動産評価額や税負担の見込みといった客観的な情報を共有しながら、冷静な判断を促すことができます。「感情的には納得できなくても、数字で見れば妥当な分割方法だとわかった」というお声をいただくことも少なくありません。
また、遺産分割協議や共有物の解消には高度な法的側面も伴うため、必要に応じて弁護士・司法書士とも密に連携し、税務・法務の両面からお客様にとって最適な解決策をご提案することが重要です。

📌 よくある質問(Q&A)

Q. 兄弟3人で実家を「とりあえず共有名義」にしようと考えています。将来、そのうちの1人が「売りたい」と言い出した場合、売却はできますか?
A. 不動産全体を売却(または建替えや大規模修繕)するためには、共有者全員(3人全員)の同意が必要です。そのため、1人が売却を希望しても、他の2人が反対すれば不動産を動かすことはできません。自分の「持分(3分の1の権利)」だけを単独で売却することは法的に可能ですが、一部の権利だけを買い取る一般の買い手はほぼ存在しないため、現実的には親族間での話し合いが必要になります。
Q. 家族信託を使うと、なぜ共有名義のトラブルを防げるのでしょうか?
A. 家族信託では、不動産の「名義(管理・処分の権限)」を信頼できる代表者1人に託し、そこから生じる「利益(経済的価値)」を複数人の相続人に割り振ることができます。名義が1人に集約されているため、将来の売却や活用において意見が対立して不動産が凍結する事態を防ぎつつ、経済的にはご家族全員へ平等に分配するという、共有名義のデメリットだけを排除した対策が可能になります。

 

まとめ

共有名義の不動産は、「とりあえず平等に」という選択が、将来の大きな負担につながりかねません。代償分割・換価分割といった選択肢を早い段階で検討し、専門家を交えて話し合うことが、円満な相続への近道です。
当事務所では、税務のプロである税理士事務所と、生前対策・法務のプロである行政書士事務所を併設しております。不動産の評価から遺産分割協議書の作成、相続税申告といった「相続発生後の手続き」はもちろん、家族信託の組成や遺言書作成といった「生前対策」まで、窓口を一つに絞って一気通貫でサポートできる体制を整えています。
大切な資産を笑顔で次世代へつなぐために、都心部の不動産相続でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

不動産相続は税理士選びで差が出ます 初回相談は無料です。
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【ご案内と免責事項】 本記事の内容は、執筆時点の法令・通達に基づいた一般的な情報提供を目的としております。実際の相続においては、個別の事案(財産構成、親族関係、特例の適用要件等)により、税務判断や最適な対策は大きく異なります。
記事の内容には万全を期しておりますが、掲載情報の利用によって生じた損害等について、当事務所は一切の責任を負いかねます。具体的な判断にあたっては、必ず事前に当事務所、またはお近くの専門家にご相談ください。

この記事を担当した税理士

宮本志穂税理士事務所

宮本志穂

保有資格
税理士試験官報合格:簿記論・財務諸表論・法人税法・所得税法・相続税法、宅建士

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